弘前大学

【プレスリリース】白神山地の地すべり発生履歴は樹木が語る(農学生命科学部)

2021.05.13

本件のポイント
  • 白神山地の岩木川上流大川流域にある地すべり地でブナを含む12樹種の落葉広葉樹を対象として、90個体から年輪サンプルを採取し、その樹齢判読と年輪幅解析を行った結果、約70年前までの地すべりの発生履歴を解明しました。
  • 地すべり発生履歴に関する研究に供試木とされた例が少ない落葉広葉樹を用いて樹種による反応性の違いを検討し、年輪幅時系列での変化パターンをもとに各時期に発生した地すべり規模・発生位置を復元できる可能性が示唆されました。
  • 地すべりの発生履歴の解明は、世界自然遺産白神山地での森林環境保全や防災に貢献します。
本件の概要

弘前大学農学生命科学部の鄒青穎助教と石川幸男教授と檜垣大助名誉教授らのグループは、白神山地の大川流域にある地すべり地でブナを含む12樹種の落葉広葉樹を対象として、成長錐を用いて90個体から太さ5㎜の年輪サンプルを採取し、樹齢判読と年輪幅解析を行いました。
その結果をもとにこれまで不明だった地すべり発生履歴を推定したところ、約70年前から現在までの間に地すべりが断続的に活動を繰り返し、10回も動いたことが判明しました。地すべりによる撹乱をきっかけとして発生する生育条件の変化に応じた年輪幅の変化に着目すると、地すべりの影響を受けて根系が切断されたり樹幹が埋没することによって年輪幅が急激に低下する可能性があります。
その一方で、地すべりで幹が傾斜したことに反応して特異な材(アテ材)が形成されて年輪幅が広がったり、地すべり発生後に林冠が空いて日光が当たることによって成長が急激に加速する可能性もあります。本研究は、こうした生育特徴を解明し、年輪の急激な変化を時間指標とし、地すべり発生との関係を明らかにすることで、地すべりの発生年代解析方法を組み立てています。
本研究結果は、日本有数の地すべり地帯である世界自然遺産白神山地で、土地の動きと樹木成長の関係からダイナミックな自然を読み解くことや森林環境保全や防災に重要な知見を与えるものといえます。

なお、本研究成果は、2021年4月25日(日)公開のWater誌にオンライン掲載されました。
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