弘前大学

【プレスリリース】薄型触覚センサを利用した採血針の穿刺支援システムの開発について(理工学研究科)

2021.12.02

本件のポイント
  • 理工学研究科の笹川教授と藤﨑准教授のグループは、採血時の針刺し支援装置として、針穿刺時の手応え感を計測し、血管貫通を判定するシステムを開発した。
  • グループで開発を進める薄型の触覚センサを組み込んだシステムによるもので、若手看護師など医療従事者の支援や教育のために活用が期待される。
  • 本研究に関する最新の成果は同研究室所属の大学院生瀬田雄元らがまとめ、日本臨床バイオメカニクス学会が発刊する臨床バイオメカニクス誌Vol.42に掲載され、優秀論文賞を受賞(11 月 5 日受賞)した。(論文題目「薄型力覚センサを利用した穿刺支援システムの開発」)
本件の概要

安全でスムーズな穿刺の実施は患者および医療従事者の負担の軽減のために望まれている。正確で迅速な採血針の刺入のためには、熟練採血者の手の運動のみならず、血管壁を貫通する瞬間に手技者が指先で感じる触覚を定量的に評価する必要がある。笹川教授・藤﨑准教授らのグループでは指先に接着可能な、薄くてしなやかな接触応力およびせん断応力(ずれ方向に働く力)を計測可能な触覚センサを開発している(特許取得済み)。このセンサを指先に設置して採血針の穿刺を行うことで、皮膚と血管壁を貫通時の穿刺力に相当する指先でのせん断応力の変動データが計測され、針が血管壁内に到達したかの判定に応用できる可能性が明らかになった。

そこで本研究では、翼状採血針刺入時の指先にかかる力覚を、この薄型センサを用いてリアルタイムに測定し、血管壁貫通を判別して穿刺者に提示するシステムを試作し、その有用性を検証した。採血トレーニング用の前腕モデルを用いた実験では、3種類の太さの針を用いて5回ずつ穿刺を行ったところ、全ての試行で血管壁貫通の提示を確認できた。本システムは、穿刺者に刺入停止位置を提示することができるため、血管壁貫通時の力覚変化の検出に不慣れな初心者に向けた穿刺支援や、教育用トレーニングシステムとして利用できる。

医工連携研究を推進する理工学研究科附属医用システム創造フロンティアでは、採血自動化のための医療支援ロボットの開発プロジェクトを展開している。本触覚センサシステムにより採血熟練者の穿刺時の感覚を定量的に分析しデータベース化できれば、今後採血やワクチン接種といった医療手技の高精度化や高効率化に向けたロボット技術への応用が期待できる。

本研究に関する最新の成果は笹川研究室所属の大学院生である瀬田雄元らが論文としてまとめ、日本臨床バイオメカニクス学会が発刊する学術誌である「臨床バイオメカニクス」42巻に「薄型力覚センサを利用した穿刺支援システムの開発」として掲載され、11月5日に同学会より優秀論文賞を受賞した。

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