出版会概要

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弘前大学出版会設立の理念

弘前大学長(当時) 遠藤 正彦

 文系,理系を問わず,文部科学省科学研究費補助金を始めとする報告書の多くは,オフセット印刷とレザックの表紙となることが多い。この種の報告書は,一部の研究者グループによっては極めて価値は高いものの,一般の研究者から読まれることは少なく,また原著論文として引用されることは極端に少ない。これは,第三者によるピアレビューを受けていることが少ないので一般的には評価が少ないことと,図書館等の二次資料に掲載されることが少ないため,一般の研究者の目に触れることがないことのためである。

学長の元には,本学教員による様々な分野のこの種の報告書が多数届けられる。心血を注ぎ年月を費やしたであろう報告書が,そのまま日の目を見ずに放置されるであろうことを思うと残念でならない。だから,この種の報告書を,レイアウトを変え,第三者のピアレビューを受け,ISBNの付された書籍として出版されたらどうだろう。国立国会図書館に収められ,全国の図書館の書籍棚に並べられ,また全国の図書館の二次資料に登載されることにより,二次資料に登載されなかった報告書の場合より,将来に渡って何倍,何十倍もの研究者に読まれ,時には予想を超えたはるかに高い評価が与えられるかも知れない。

文系,教育系,芸術系研究者の研究論文は,かなりのボリュームである。これらを投稿する場が少ない。また,個人として出版するには経費と手間がかかる。本学の出版会の設立は,ここを狙っていた。本学の出版会は,地方というハンディを背負った本学の研究者が,自らの研究成果を容易に出版できるようにすることを手助けするためのものである。出版会の編集委員の諸氏の出版に関わるノウハウの高いレベル,そして経費の一部を大学が支援するというシステム,そして,学内の正式な組織の一つとしての位置づけをもっていることが,本学出版会の著しい特徴である。

本学及び本学関係の研究者が,ISBNの付された図書を刊行し,これを全国,否世界の図書館書架に並ばせることにより,研究者自身の評価と共に,本学の研究も高まることが確実に期待される。学長はそれを本学の生き残り策の一つと考えている。

(本項は平成16年に執筆されたものです)

弘前大学出版会設立時の特徴

弘前大学出版会編集委員長(当時) 真下 正夫

 平成14年7月4日学内の第1回研究推進委員会において4名からなる出版事業ワーキンググループ(WG)が発足し、弘前大学出版会設立の検討を開始してから平成16年6月28日設立まで2年に満たない超スピードで実現したのは遠藤学長の出版会設立に対する強い熱意と積極的な姿勢が大きな力となったと思う。他大学では多くの場合、出版会設立の有志の会からスタートし、設立までに数年以上要するのが普通である。弘前大学では学長のリーダーシップの下で慎重に設立の検討を行いながらも効率よく進められた点に第一の特徴がある。

これまで国立大学が出版会を設立するにはその事業的性格のため学内に組織することはできず、学外に任意団体、財団法人あるいは株式会社など外郭団体としての形態をとらざるを得なかった。しかし、平成16年4月の法人化以降は国立大学法人の中に大学出版会を設立することが可能となった。その場合、出版会の大学内の位置づけとして大学の教育研究活動の補助活動とする場合と収益事業とする場合とがある。弘前大学出版会設立準備会で種々検討した結果、弘前大学出版会は大学組織内に置き、教育研究活動の補助活動として位置づけることに決定した。これが第二の特徴である。著者負担分を除く出版会経費は学内予算に計上し、販売による回収分は大学に還元されることにした。出版会を学内に組織したのは旧国立大学では弘前大学が最初のケースであり、弘前大学出版会は他大学から大いに注目されることになった。弘前大学出版会の意義は遠藤学長が述べられているように大学にとって極めて有意義であり、有益となることを信じている。今後、弘前大学出版会に続く他の国立大学法人出版会のためにも是非弘前大学出版会を軌道に乗せ、成功例の1つとしたい。

(本項は平成16年に執筆されたものです)