- 令和6年度大学院秋季入学式告辞(令和6年10月1日)
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夏の厳しい暑さも和らぎ、秋の気配が感じられる季節となりました。本日、弘前大学創立五〇周年記念会館みちのくホールにおいて、令和六年度秋季大学院入学式を挙行できますことは、私たち教職員にとりまして、誠に喜ばしい限りです。本日、外国人留学生七名を含む二十五名の大学院入学生に対して、心からの祝意を表するとともに、歓迎いたします。また、これまで皆さんを支え続けてこられたご家族や関係者の方々にも、お祝いを申し上げます。おめでとうございます。
秋の入学式は、春に比べて参列者も少なく、華やかさに欠けるかもしれませんが、皆さんに対する私たちの歓迎と期待の大きさは少しも変わることはありません。皆さんは、弘前大学にとって、そしてこれからの社会にとっても貴重な存在です。今後、大学院での研究生活の中で、人文社会科学や自然生命科学など、さまざまな学問分野において真理を追求し、新たな知見を創造し、世界をリードする人材への成長を期待しています。
研究とは、先人たちが築き上げてきた業績を礎とし、観察や実験による事実とデータをもとに、自らの発想やアイデアを駆使して、未知なる知識の体系を構築していく神聖な行為です。その道のりは決して平坦ではなく、時に困難や試練に直面することもあるでしょう。しかし、抱く夢や目標が大きいほど、課題を乗り越えた経験は、今後のキャリア形成においてかけがえのない財産となるに違いありません。
研究を始めるにあたり、何よりも重要なことは、自らの研究テーマを設定することです。自らの探求心に基づき、解明したい課題を見つけ出すことが、研究の出発点となります。自らの手で課題を設定し、その課題に向き合い挑戦することで、研究の道は大きく開かれることでしょう。
科学に携わる者として決して忘れてはならないことがあります。それは、研究倫理の遵守です。昨今、国内外で報じられる研究不正は、科学に対する信頼を揺るがす行為であり、決して許されるものではありません。皆さんには、高い倫理観を持ち、誠実に真理を追究する姿勢を持ち続けていただくよう、お願いいたします。
入学生の中には外国からの留学生もおられます。異国での生活や研究においてさまざまな困難があるかもしれません。しかし、弘前大学は全力を挙げて皆さんを支援いたします。皆さんの研究生活が実り多いものとなり、大学院に留学した目標を達成できるよう心よりお祈り申し上げます。
結びに、ここ弘前大学での皆さんの大学院生活が充実し、実り豊かなものとなることを祈念し、令和六年度秋季大学院入学式の告辞といたします。
令和6年10月1日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和6年度秋季学位記授与式告辞(令和6年9月30日)
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秋の訪れを一層感じる今日この頃、ここ弘前大学創立五十周年記念会館みちのくホールにおいて、令和六年度秋季学位記授与式を挙行できますことは、私たち教職員一同にとりましても、非常に大きな喜びであります。秋の授与式は春季に比べて、やや静かで華やかさにかけますが、皆さんへの祝福の思いは変わらず、深いものであります。外国人留学生二名を含む学部卒業生二十七名、外国人留学生五名を含む大学院修了生二十三名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。弘前大学を代表し、心からお祝い申し上げます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族やご友人、関係者の皆様にも、お祝いと感謝を申し上げます。
皆さんが今日この日を迎えられたのは、日々の努力の積み重ねによるものです。特に、学生生活前半は新型コロナウイルスの影響により、学業や研究が困難を極めたはずです。あきらめずに学び続けた皆さんに、惜しみない賞賛を送りたいと思います。
弘前大学での学びを通じて、皆さんは知識を深め、さまざまな経験を積み、自分自身の成長を実感しているはずです。その成長を信じ、自信を持って新たな社会へと飛び立っていただきたいと思います。特に、大学院を修了された皆さんは、修士論文や博士論文という大きな目標を達成されました。その経験と培った専門性を、今後の社会やさらなる研究の場で存分に活かしていただければと願っております。
ますます先行きが不透明で、複雑な課題が山積する社会に、皆さんはその歩みを進めることになります。人口減少や少子高齢化、グローバル化、さらにはAIなどの技術革新が急速に進む中で、直面する様々な課題に立ち向かい、社会に貢献していただけることを心より期待しています。
卒業生・修了生の皆さんは、今後、弘前大学の約七万人に及ぶ同窓生の一員となります。卒業生は、私たち大学にとって最大の誇りであり、かけがえのない財産です。皆さんには、弘前大学そして弘前市で過ごした思い出を大事にして、今後も大いにご活躍されることを祈念いたします。弘前大学はこれからも、皆さんの挑戦を全力で応援してまいります。どうか皆さんも、同窓生として母校を支えていただければ幸いです。
卒業生の中には海外からの留学生もおられます。異国の地である弘前において、言語や文化の違いなどの数々の試練を乗り越えて、見事に学位を取得されました。皆さんの努力と成果に対し、心より敬意と祝意を表します。母国に帰国された後も、あるいは世界のどこにおいても、ここで学び得た知識と経験をもとに、より一層、広く社会に貢献されることを切に願っております。
そして、皆さんがこの晴れの日を迎えられたのは、皆さんの努力だけでなく、ご家族や友人、教職員、そして地域の方々の支えがあったからこその成果であることを忘れず、感謝の気持ちを大切にしていただきたいと思います。
結びに、皆さんの今後の健康とご多幸を心よりお祈り申し上げますとともに、皆さんの前途に輝かしい未来が広がっていることを切に願い、令和六年度秋季学位記授与式の告辞といたします。本日は誠におめでとうございます。
令和6年9月30日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和6年度大学院入学式告辞(令和6年4月5日)
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ここ弘前市民会館において関係者をお迎えして、令和6年度の弘前大学大学院入学式を挙行できますことは、私たち教職員にとって大きな喜びであります。本日入学の日を迎えられた外国人留学生28名を含む大学院入学の335名の皆さんに対して、心から歓迎の意を表するとともに、お祝いを申し上げます。ご入学、誠におめでとうございます。この入学式の模様は、保護者の皆様や関係者の皆様に向けてライブ配信されています。ご視聴されている皆様方にも、どうか新入生を祝福いただきますよう、お願い申し上げます。
大学における高等教育を修められた皆さんは、新たな研究テーマに挑戦する決意を表明し、今、入学式に臨んでいます。新たな可能性を開拓し、未来を切り拓く冒険に挑戦する皆さんに、学長として、また皆さんの先輩として、心から賞賛し、歓迎したいと思います。
これからの研究生活では、高度な知識や技術を習得すると同時に、豊かな想像力と創造性、徹底した調査力、果敢な行動力、そして論文にまとめる表現力が求められます。研究対象の歴史と現状の課題を分析・理解することに加えて、日常的に身近な課題を発見する習慣と、真摯に深い議論を重ねることで、これらの能力が養われるはずです。おそらく、皆さんの研究がたやすく研究成果に繋がることはないように思います。むしろ、失敗や計画の見直しが頻繁に起こるはずです。失敗から学び、それを成功に繋げることが研究の真価を示すものです。失敗を楽しむくらいの精神的な余裕と、分析して次に活かす力、そして決して諦めない粘り強さがあれば、いずれは良い結果を得ることができると私は信じています。
近年、国内の大学の研究力の低下が問題視されています。研究力・競争力の低下は海外の大学と日本の大学との間で、研究環境の整備や学生および優秀な若手研究者の育成等に活用するための資金力・財政面において、その差が拡大していることが要因と言われています。地方都市にある弘前大学もまた、研究費を含めて研究環境は十分ではありませんが、地域に根ざした独自の研究や世界水準の研究分野において、本学の論文数は確実に増えています。最近では、多くの大学院生の論文が国際的に高い評価を受けており、本学の研究レベルの向上に大きく寄与しています。「世界に発信し、地域と共に創造する」をスローガンとする研究者たちの指導の下で始まる皆さんの研究が、世界に意義ある足跡として残るような研究業績に繋がることを期待しています。
研究活動は、崇高な倫理観のもとに新たな知の創造や社会に有用な発明に取り組み、社会の期待に応えるものでなければなりません。しかしながら、データの改ざんや不正な実験手法の使用など、研究不正や倫理違反が依然として発生しています。これらの行為は、研究成果の価値を失わせるだけでなく、科学研究への信頼と期待を損ない、科学技術の健全な発展を阻害することになります。大学院生の研究も含め、もしも弘前大学で研究不正が発生すれば、本学がこれまで積み上げてきた信頼は大きく失墜することになります。大学院での研究をスタートする今、誠実な科学者として倫理的な規範や原則を遵守することを誓ってください。
入学生の中には外国からの留学生もおられます。異国の地での学びと研究には、言語や習慣の違いから生じる様々な困難があるはずです。そのような困難を覚悟の上で、弘前大学での研究生活を選択した皆さんに敬意を表するとともに、歓迎いたします。本学が提供する環境とサポートを活用し、自らのポテンシャルを最大限に発揮して、大学院に入学された目標がしっかりと達成されるよう願っています。
結びに、今一度、弘前大学における皆さんの大学院生活が、健康で、実り豊かなものになるよう祈念し、そしてまたポストコロナ時代の日本および世界を創り、リードする人材へ成長する数年間となることを強く願い、大学院入学式の告辞といたします。ご入学、誠におめでとうございます。
令和6年4月5日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和6年度入学式告辞(令和6年4月5日)
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様々な苦難を乗り越えて、今、入学式に臨む新入生の皆さん、弘前大学へのご入学、誠におめでとうございます。教職員を代表して心よりお祝いを申し上げます。そして、これまでの長きにわたり、成長を温かく見守り、勉学を支えてこられましたご家族の方々にも、衷心よりお喜びとお祝いを申し上げます。なお、これまでの経験を生かし、ご来場が難しいご家族・関係者の方々に向けて、ライブ配信を行っています。ご視聴されている皆さん、どうか一緒に新入生を祝福いただきますよう、お願い申し上げます。
さて、皆さんはコロナ禍の高校生活を経験し、そして大学入試を勝ち抜き、晴れて入学の日を迎えました。待ち望んだ大学生活がいよいよ始まることに、喜びと期待で胸がいっぱいのことと思います。弘前大学の主役となる皆さんを心から歓迎するとともに、皆さんが夢に思い描いてきた大学生活が実現できるよう、教職員一同で支援することを約束いたします。
およそ6割の新入生の皆さんは、青森県以外の出身です。青森県唯一の国立大学が、何故、弘前市にあるのか、はじめに弘前大学の歴史を簡単に紹介させていただきます。弘前大学は、弘前市にあった旧制弘前高等学校、そして青森市にあった青森師範学校と青森医学専門学校の3校が母体となって、昭和24(1949)年、新制大学:弘前大学が弘前市に誕生しました。明治9年(1876年)創立の青森師範学校から数えると、およそ150年の歴史があります。では、2つの母体校が青森市に所在するにもかかわらず、何故、青森県唯一の国立大学が弘前市に誕生したのか、これには第二次世界大戦末期にあった青森大空襲が関わっています。この大空襲によって青森師範学校と青森医学専門学校が全焼し、その存続を願う関係者、とりわけ空襲の被害が少なかった弘前市や地域の有力者の方々のご尽力によって、2つの学校の弘前市への移転が実現し、弘前大学が誕生したのです。このような背景もあって、本学の卒業生でもあるご来賓の弘前市長をはじめ、弘前市民の皆さんは、弘前大学を心から愛し、弘大生をいつも優しく見守ってくださっています。
皆さんは大学生となり、4年(医学科の場合は6年)もの自由な学びの時間を手にしました。これほど長い自由な時間は、人生において大学時代にしか得られないものです。この貴重な時間をどう活用するかによって、皆さんの未来が大きく左右されると言っても過言ではありません。家庭と学校・予備校といった限られた空間で過ごした皆さんの中には、学びのスタイルや生活のリズムの違いに戸惑い、この貴重な時間をどう使うべきか、悩む方もいると思います。大事にして欲しいことは、個々が潜在的に持っている能力を開花させ、皆さん自身の価値を高めることです。授業だけでなく、部活動やサークル、アルバイト、ボランティア活動、そして国内外への留学など、多様な経験を重ねることで、皆さん一人ひとりの個性、潜在能力が引き出され、やがては将来の夢やなりたい自分の発見につながっていくはずです。知りたい・学びたいという知的好奇心のままに、これまで関心がなかったことにも視野を広げ、勇気をもって一歩踏み出してみてください。もちろん挑戦したことのすべてが結果に結びつくわけはなく、むしろ失敗ばかりでうまく行かないことの方が多いかも知れません。それでも、自ら望んで獲得した知識や汗を流した経験は、生きる知恵となり、必ずや未来の皆さんを支える力となると信じて、失敗を恐れずに様々なことに挑戦してみてください。
私も弘前大学の卒業生ですので、皆さんの先輩になります。49年前、期待と不安を胸に抱きながら出席した⼊学式の光景を、昨⽇のことのように鮮明に覚えています。卒業後に母校の大学院に進学し学位を取得させていただき、その後も医師・研究者として弘前大学で学び、教え、研究・臨床に従事させていただきました。弘前大学で過ごした日々は、私の人生の中で最も誇りに思うべきものです。弘前大学は今も、そのような感情を育むのに必要な環境を備えた大学です。弘前大学で学んだことが皆さんの誇りとなり、そして大学生活が思い出に溢れたものとなるよう、心から願っています。
皆さんがこれから学び暮らす街、弘前市は城下町として栄えた街であり、豊かな歴史と文化が息づいています。また、弘前大学を含めて5つの高等教育機関を有する学園都市として、大学生の学びや暮らしを支える環境が整っています。そして、自然風景に恵まれたこの地域では、四季折々に全国的に有名な祭りが開催され、その華やかさや活気ある雰囲気が街を彩ります。まもなく、弘前公園の桜が咲き誇り、皆さんの入学を祝い、歓迎してくれるはずです。「あずましい(住みよい)」と形容されるこの町の暮らしの魅力も存分に味わってください。
皆さんが今日、晴れやかな入学式を迎えることができたのは、皆さん自身の努力の賜物です。しかし、ご家族や恩師、関係者の支援があってこその成果であることを忘れてはなりません。お世話になった方々への感謝の気持ちを忘れずに、皆さんの夢や希望の実現に向けて時を刻む決意を、大学生活のスタートを切る今、新たにしていただきたいと思います。
結びに、新入生の皆さんの弘前大学での学生生活が、健康で、楽しく、実り多く、そして生涯にわたる貴重な財産となりますよう、心から祈念して、入学式の告辞といたします。
令和6年4月5日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度大学院学位記授与式告辞(令和6年3月22日)
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雪の少ない暖かかった冬も終わりを告げ、この津軽の地に待望の春を迎えようとしています。そのような中、保護者の皆さんをここ弘前市民会館にお迎えして、令和5年度大学院学位記授与式を挙行するにあたり、教職員を代表して告辞を述べさせていただきます。まずは、大学院を修了し、本日、学位を取得される皆さんに、心からお祝いを申し上げます。誠に、おめでとうございます。そして、これまで皆さんを支えてこられたご家族の皆様と学生の指導にあたりました先生方にも、心よりお祝いと感謝を申し上げます。関係者の皆様方にも、修了生の旅立ちを心から祝福いただきますよう、お願い申し上げます。
本学の研究者は常に世界を見据えて研究活動を行っています。そのような研究者の指導の下で完成した皆さんの研究成果が国際的なジャーナルに掲載され、高い評価を得たことは、本学のスローガンである『世界に発信し、地域と共に創造する大学』を具現化するものであり、皆さん自身も満足感と達成感に包まれているはずです。そして、皆さんの残した研究成果は、弘前大学の研究業績の一つとしてこれからも生き続け、次の世代へ受け継がれることになります。皆さんの研究環境は十分とは言えなかったかも知れませんが、そんな中で本学の研究力の高さを国内外に示してくれたことに、心から感謝しています。
修士課程を修了して博士課程に進学する皆さんには、これからも研究者としての知的好奇心と探究心を持ち続け、人類が直面する課題を解決するための研究テーマに、今後も積極果敢に挑戦することを期待しています。また、修士課程あるいは博士課程を修了し、企業等に就職され、新たなステージに進む皆さん、大学院で学んだ高度な基礎科学、応用科学、自然科学、人文科学あるいは社会科学の考え方は、決して大学院での研究に限定されるものではなく、これから皆さんが歩み出す社会の中でこそ活かされなければなりません。何らかの形で地域社会や国際社会に還元することが、大学院を修了した皆さんの使命であるという自覚を強く持ち、新たなスタートを切っていただきたいと願います。
本日、修了される皆さんの中には海外からの留学生もおられます。異国の地、しかも厳しいコロナ禍の下での大学生活には、きっと数々の試練や困難を伴ったことでしょう。どんな状況でも諦めずに研究を継続し、学位を取得されましたことに敬意を表するとともに、心から皆さんの努力を称えたいと思います。今後は、皆さんの母国と我が国、なにより弘前大学との間の懸け橋であり続けていただけたなら、本学にとってこんな幸いなことはありません。弘前大学の修了生であることを誇りとし、重ねた経験と知識を力にして、次のステージで活躍されることを、心から願っています。
晴れて、本日、大学院修了の日を迎えられたのは、皆さん自身の努力の賜であることは言うまでもありませんが、ご家族や指導にあたった教員はもとより、多くの方々、特に地域の方々から、コロナ後の未来社会の担い手となる皆さんへの期待は大きく、たくさんの温かい支援がありました。苦しくもあり、楽しくもあった研究生活の思い出とともに、多くの方々への感謝の思いも忘れないでください。
皆さんの多くはここ弘前の地を離れます。ときには、そして、なんらかの機会に、学び・暮らした街:弘前の地を訪れ、母校である弘前大学にも立ち寄っていただければ幸いに思います。また、この春、学生・卒業生との新たなネットワーク形成事業「校愛会」を創設します。皆さんが恩師や仲間と過ごしたキャンパス内の風景、本学の教育・研究の取組・実績、さらには後輩たちの大学生活に関する情報を、卒業生・修了生にお届けし、皆さんと母校との縁をつなぐものです。皆さんにも、是非ともご入会をお願いいたします。
終わりに、本日、修士あるいは博士の学位を取得された301名の皆さん、お一人おひとりの今後のご健勝とご多幸を心からお祈りして、告辞と致します。
令和6年3月22日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度学位記授与式告辞(令和6年3月22日)
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雪の少ない暖かい冬が終わり、待望の春の訪れとともに、卒業生をお送りする季節を迎えました。本日、ここ弘前市民会館において、ご来賓の方々と保護者の皆さんのご臨席の下、令和五年度の学位記授与式を挙行できますことは、私たち弘前大学教職員にとりまして、この上ない喜びであります。
まずは、学位を取得し卒業される皆さんに、教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。皆さんを支え、励ましてこられたご家族、ご友人、関係者の方々にも、お祝いを申しあげます。同時配信でご視聴の皆様方もまた、卒業生の旅立ちを祝福いただきますよう、お願い申しあげます。
卒業生の皆さんの多くは、令和2年4月に弘前大学に入学しました。希望に胸をときめかせるはずだった皆さんの学生生活の大半は、新型コロナウイルス感染症という未曾有の危機と向き合うものでした。晴れの入学式は中止となり、入学直後から授業はメディア授業へ、そして日常生活で様々な制約を受けるなど、皆さんは過去のどんな世代にもなかった苦労を経験しました。皆さんのことを「コロナ世代」と呼ぶ方もいますが、私は「逆境に打ち勝ち、未知の未来に向けて前進する強い意志を育んだ特別な世代」だと思います。学びを諦めることなく卒業の日を迎え、晴れて旅立ちのスタートラインに立つ皆さんに、思いっきりの祝意と敬意を表します。卒業おめでとう、本当によく頑張りました。弘前大学での学生生活が一生の宝物となり、そして、今日の卒業式が最後で最高の思い出として皆さんの心に刻まれるよう、切に願っています。
今回のコロナ禍では、皆さんを含む大学の構成員全員の団結力が、苦難を乗り越える大きな原動力となりましたが、一方でたくさんの「応援団」がいたことを私たちは忘れてはなりません。未来を担う若者のためにと、地域の皆さんだけでなく全国から、ご寄付と激励のメッセージが寄せられました。他者からの優しさに、私たちの傷つき折れそうな心が癒され、団結力を生み出す大きな力となり、希望を与えてくれました。とりわけ皆さんは、今日、この会場の後方から皆さんの背中を感慨深く見つめる保護者の方々の支援がなければ、晴れて卒業の日を迎えることはできなかったはずです。どうか、お世話になった方々への感謝を忘れずに、これからの人生を力強く歩んでいってください。
国内外の社会情勢が目まぐるしく変化する中で始まる新たな旅路を前に、希望よりも不安を感じている方が多いのではないでしょうか。そんな皆さんに、「君たちはどう生きるか」 という言葉を贈りたいと思います。戦前の児童文学者、吉野源三郎氏の名作のタイトルであり、7年前には漫画本として発刊され、ベストセラーにもなりました。最近では、アカデミー賞を受賞した宮崎駿作品のタイトルにもなっています。このシンプルな言葉は、個々の人生の意味や自己のあり方を深く探求することの重要性を教えています。皆さんを迎える未来社会には、急激な変化や不確実性が絶えず存在しています。そのような状況の中でも、自己を理解し、自らの人生に意味を見出すことができれば、未来に立ち向かう勇気と希望を持つことができます。自分自身を見失いそうになったとき、人生の岐路に立ったとき、「自分はどう生きるか?」と、自分自身に問うてみてください。必ずや、新たに進むべき道を見つけ、自己を成長させるための励ましの言葉となるはずです。
皆さんの多くはここ弘前の地を離れます。弘前大学はそれぞれの道で活躍する皆さんをこれからも応援し続けますが、皆さんもまた、母校である弘前大学の今後の発展を見守るとともに、後輩たちを力強く応援してくださるよう、お願いいたします。この春、弘前大学は学生・卒業生との新たなネットワーク形成事業である「校愛会」を本格スタートさせます。恩師や仲間と過ごしたキャンパス内の風景、本学の教育・研究の取組・実績、さらには後輩たちの大学生活に関する情報を、時々、卒業生にお届けし、皆さんと母校との縁をつなぐものです。是非ともご入会をお願いいたします。
結びに、次のステージに羽ばたく卒業生の皆さんの未来が輝かしいものになるよう強く願い、そして皆さんの今後のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げて、お祝いの言葉といたします。ご卒業、誠におめでとうございます。
令和6年3月22日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度大学院秋季入学式告辞(令和5年10月2日)
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暑さの夏が終わり、涼しい風とともに、足早に秋の気配が感じられる今日この頃となりました。ここ弘前大学創立五十周年記念会館みちのくホールにおいて、令和五年度の大学院秋季入学式を挙行できますことは、私たち弘前大学教職員にとって大きな喜びであります。本日入学の日を迎えられた外国人留学生十三名を含む二十四名の皆さんに対して、教職員を代表し、心からお祝いを申し上げます。ご入学、誠におめでとうございます。また、ご家族や関係者の皆様方にもお祝いを申し上げます。秋の入学式は、少人数での簡素化したものとなっていますが、皆さんに対する私たちの祝意や歓迎の大きさが変わることはありません。
皆さんが選んだ大学院での研究生活は決して容易なものではなく、幾多の困難や挫折が待っているはずです。それでも、最先端の研究に挑戦するために大学院への進学を決断した皆さんの勇気を、学長として、また皆さんの先輩として、心から賞賛し、歓迎したいと思います。
今日、私たちを取り巻く社会情勢はますます複雑化し、目まぐるしく変化しています。未来の日本のみならず世界をリードし、社会変革を巻き起こす次代のリーダーを社会は待ち望んでいます。皆さんは、そのような社会からの大きな期待を背負って、人文社会科学や自然生命科学などの学問分野で、真理を探求する研究の道を歩むことになります。苦労の多い道のりですが、新たな知識や技術を追求する研究生活の過程には、革新的な技術につながるアイデアがたくさん潜んでいます。同じ志を持つ指導者および仲間とのつながり、あるいは異なるバックグラウンドを持つ研究者との偶然の出会いをきっかけに、皆さんの新たな挑戦がはじまり、多くの仲間と共に学び、共に成長し、共に問題に取り組むことで、やがて皆さんの前にゴールがみえてくるはずです。そして、努力を重ねた研究者しか味わうことができない、新たな知見にたどり着いたときの達成感と満足感をもってゴールを切る、そんな日が皆さんに訪れることを切に願っています。
残念ながら、研究に対する信頼性と誠実性を失墜させる研究倫理不正が、いまだ後を絶ちません。科学と知識を追求する研究者は、常に高い研究倫理観を持ち続けなければなりません。小さな研究倫理不正であっても、人々の科学への信頼が失われ、科学の発展を妨げるものとなります。大学院での研究をスタートする今、高い研究倫理観を胸に誠実に真理を追究する決意を新たにしていただきたいと思います。
入学生の中には外国からの留学生もおられます。異国の地での研究生活には、時に困難で孤独な瞬間もあるかもしれませんが、数え切れないほどの素晴らしい経験が待っているはずです。留学生としての経験は一生の宝物であり、得られた国際的な視点は、皆さんの将来のキャリアに大きく貢献するはずです。弘前大学における今後の留学生活が実り多いものとなり、大学院に留学された当面の目標がしっかりと達成されるよう、弘前大学は全力で皆さんを支援することを約束します。
終わりに、今一度、今後の弘前大学における皆さんの学生生活が充実したものとなることを祈念して、秋季入学式の告辞といたします。ご入学、誠におめでとうございます。
令和5年10月2日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度秋季学位記授与式告辞(令和5年9月29日)
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記録的な猛暑の夏もようやく終わりを告げ、涼しい風が心地よい季節となりました。本日、ここ弘前大学創立五十周年記念会館みちのくホールにおいて、令和5年度の弘前大学及び弘前大学大学院の秋季学位記授与式を挙行するにあたり、一言、告辞を述べさせていただきます。
学部卒業生21名、外国人留学生11名含む大学院卒業生30名、計51名の皆さんを社会に送り出すことができますこと、大変、嬉しく思っております。教職員一同を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご卒業、誠におめでとうございます。また、これまで皆さんを支えてくださいましたご家族の皆様、そして指導にあたりました先生方にもお祝いと感謝を申し上げます。
大学生活で得た知識と経験、学んだ価値観は、困難な課題を解決するための大きな力とはなりますが、それだけではまだまだ不十分です。これから始まる皆さんの社会人としての新たな未来への歩みは、新たな学びの旅路のスタートでもあります。皆さんが歩む道は直線ではなく、曲がりくねり、時には山あり谷ありであり、挫折・失望することも多いはずです。しかし、その過程で得る知識や経験は、皆さんをより強く、柔軟で賢明な人間に育ててくれるはずです。失敗は成功への階段の一部であり、怖れずに前進する勇気を持ってください。そして、混沌とした社会であればあるほど、数々の逆境を乗り越えるためには、仲間の友情や協力が大きな支えとなります。共に歩む信頼が置ける仲間を増やし、その絆を大切にしてください。
複雑化する社会情勢ですが、そこには無限のチャンスが潜んでいるのも事実です。チャンスをつかむ鍵は、創造性と柔軟性であり、新たなアイデアを開拓し、社会変化に柔軟に適応できる能力がなければ、未知の道を切り拓くことはできないでしょう。柔軟性と創造性もまた、過去の経験、とくに失敗から学び、それを次に活かすことの繰り返しでしか育むことができません。そして最後は、自分自身を信じて挑戦することです。自己への確固たる信頼があれば、どんな困難をも克服できる力が湧いてくるはずです。多くの皆さんが自らの手でチャンスをつかみ、新たな可能性を切り拓くリーダーとなって、社会に大きな変革をもたらしてくれることを期待しています。
卒業生の中には、海外からの留学生もおられます。皆さんは、多くの困難を乗り越え、思い描いた目標に到達し、今日、卒業の日を迎えました。誠に、おめでとうございます。文化や言語の違いを超えて、新しい友人を作り、新たな経験を積む中で、皆さん自身の中にグローバルな感性が芽生えたはずです。本学での貴重な経験を、お一人お一人のこれからの人生の中で役立ててください。皆さんの多くは母国へ帰国されますが、皆さんもまた本学の同窓生となります。弘前大学と母国・母校の架け橋として、文化の交流、国際的な理解を促進する役割を担っていただきますよう、お願いいたします。また、いつまでも本学との絆を大切にしていただき、いつの日か研究者として、あるいは観光目的で、第2の故郷・弘前に立ち寄ってください。私たちは、いつでも皆さんを歓迎いたします。
終わりに、本日、学位を取得された皆さんの今後のご健康とご多幸を心からお祈りするとともに、皆さんの未来が希望に満ちた明るいものになることを切に願い、令和5年度の秋季学位記授与式の告辞といたします。本日はご卒業、誠におめでとうございます。
令和5年9月29日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度大学院入学式告辞(令和5年4月5日)
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桜前線が駆け足で北上しており、ここ津軽の地が最も華やぐ桜の景色が、すぐそこまで来ています。そのような中、ここ弘前市民会館において、四年ぶりに保護者の皆さんとともに、令和5年度の大学院入学式を挙行できますことは、私たち教職員にとってこの上ない喜びであります。昨年同様、本日出席できなかった入学生ならびに関係者の方々に向けて、ライブ配信を行っています。会場においでの関係者の皆さん、そしてライブ配信をご視聴されている皆さん、どうか一緒に新入生を祝福いただきますよう、お願い申し上げます。
まずは、本日入学の日を迎えられた外国人留学生23名を含む大学院入学の352名の皆さんに対して、心から歓迎の意を表するとともに、お祝いを申し上げます。ご入学、誠におめでとうございます。学長として、また皆さんの先輩として、大学院に進学し最先端の研究を行う道を選んだ皆さんの勇気ある決断を、心から賞賛し、歓迎したいと思います。
皆さんは、大学における高等教育を修められ、さらに最先端の研究を求めて大学院へ進学されました。未知の課題に挑戦する場が大学院であり、数年を研究生活に費やすこととなります。そのような場に足を進めた皆さんの勇気ある決意に、学長として心から賞賛し、歓迎したいと思います。
様々なイノベーションや世紀の大発見が、困難や危機が訪れたときに誕生することを、歴史が証明しています。新型コロナウイルス感染症、気候変動、食糧・エネルギー危機、そしてロシアによるウクライナ侵略など、かつてない地球規模の難局に直面する今、科学研究の道を選択し、課題解決に向けて最先端の研究に挑戦する研究者への期待は大きく膨らんでいます。
そのような期待を背に皆さんは、大学院でより高度な知識や技術を修得し、新たな知見にたどり着いて、修士あるいは博士論文を完成させなければなりません。おそらく、簡単にはゴールにたどり着くことはできないでしょう。発見は、前もって積み重ねられた苦しい努力と失敗の先にあると言われますが、越えられない課題に直面したときの苦しさは、相当なものであるという覚悟も必要です。失敗を繰り返してこそ、新たな発見に近づくことができると、前向きに思考を変えて、諦めずに挑戦を続けてください。
2022年、「絶滅したヒト科のゲノムと人類の進化に関する発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞したドイツのスバンテ・ペーボ教授をご存じと思います。沖縄科学技術大学院大学の教授も務めるペーボ教授は、「沖縄の地で、多くの異分野の研究者と協力できたことで、ノーベル賞に繋がる発見にたどり着けた」と述べています。他にも、専門分野の異なる研究者からの何気ない意見が、世紀の大発見のヒントとなったという逸話はいくつもあります。本学は総合大学として、「世界に発信し、地域と共に創造する」をスローガンに掲げ、地域ならではのユニークな研究だけでなく、世界に通用するハイレベルな研究が各学部・研究科・研究所で行われています。学部の垣根を越えて、異分野の研究者と積極的に意見交換してみてください。
研究の道を選択した皆さんなら、「日本の研究力が低迷しており、注目度の高い論文の数で、ついに韓国やスペインに抜かれて第12位となった」というショッキングな現状を知っていると思います。他国の論文数が急速に伸びている中で、日本の論文数が伸び悩んでいる状況が長く続いていることによるものです。一方で、弘前大学から発表された論文数はここ10年間で1.5倍に増え、中でも大学院生が関わった学術論文が年々増えてきています。地方都市にある弘前大学の研究環境は十分とは言えませんが、本学の研究者の指導の下で重ねた皆さんの真摯な努力が、世界へ発信される大きな実を結ぶことも決して夢ではありません。
さて、知的な好奇心や探究心からもたらされる活動が科学研究であり、人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献するものでなければなりません。そのためにも、科学の発展を妨げ、人々の科学への信頼を揺るがすような不正行為は、絶対あってはなりません。残念ながら、研究活動上の不正行為に関する報道が、いまだに後を絶ちません。皆さんには、高い研究倫理観を胸に、誠実に真理を追究する決意を、大学院での研究をスタートする今、新たにしていただきたいと思います。
入学生の中には、研究活動の場として本学を選んで頂いた留学生もおられます。言語や価値観・文化の違う異国の地での生活や研究活動に不安を抱きながら、今日の日を迎えていることと思います。皆さんの留学の目標がしっかりと達成されるよう、全学を挙げて支援してまいります。
結びに、今一度、弘前大学における皆さんの大学院生活が、健康で、実り豊かなものになるよう祈念し、そして日本および世界をリードする人材へと成長する数年間となることを強く願い、大学院入学式の告辞といたします。ご入学、誠におめでとうございます。
令和5年4月5日
弘前大学長 福田 眞作 - 令和5年度入学式告辞(令和5年4月5日)
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桜前線が記録的な早さで北上しており、日本一の桜の景色はすぐそこまで来ています。そのような中、ここ弘前市民会館において、四年ぶりに保護者の皆さん、そしてご来賓の方々とともに、令和5年度の入学式を挙行できますことは、私たち教職員にとってこの上ない喜びであります。昨年同様、本日出席できなかった新入生ならびに関係者の方々に向けて、ライブ配信を行っています。会場においでの関係者の皆さん、そしてライブ配信をご視聴されている皆さん、どうか一緒に新入生を祝福いただきますよう、お願い申し上げます。
晴れて弘大生となられた新入生、1398名の皆さんに、まずは謹んでお祝いを申し上げますとともに、弘前大学の新たな構成員となる皆さんを大いに歓迎いたします。皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。また、弘前大学とのご縁を結んでいただいた皆さん、そして保護者の皆さんに、心から御礼を申し上げます。末永いお付き合い、よろしくお願いいたします。
およそ六割の新入生の皆さんは、青森県以外の出身です。青森県唯一の国立大学が、何故、弘前市にあるのか、はじめに弘前大学の歴史を簡単に紹介させていただきます。弘前大学は、旧制弘前高等学校、青森師範学校、そして青森医学専門学校などが母体となって、昭和二十四(一九四九)年に新制大学として創立されました。これは第二次世界大戦末期にあった青森(市)大空襲が大きく関わっています。青森市にあった青森師範学校と青森医学専門学校が全焼し、その存続を願う関係者、とりわけ空襲の被害を免れた弘前市や地域の有力者の方々のご尽力によって、2つの学校の弘前市への移転が実現し、弘前大学が誕生したのです。このような背景もあって、本日ご来賓の弘前市長をはじめ弘前市民の皆さんは、弘前大学を心から愛し、弘大生をいつも優しく見守ってくださっています。そして、皆さんが過ごす弘前市は、コンパクトな街並みの中に豊かな自然や高い文化の薫りを備えており、学び・暮らす街としてとても魅力的なところです。四季折々に見せる美しい景色やお祭りなど楽しめるイベントが、皆さんの大学生活に彩りと感動を与えてくれるはずです。
さて、繰り返す新型コロナウイルス感染拡大の波の中で、皆さんは様々な制約と我慢を強いられたことと思います。コロナ禍という、かつてない試練を経験しながらも、皆さんは大学受験に挑戦し、見事、弘前大学に合格、今日この日を迎えています。皆さん自身のたゆまぬ努力の賜物でありますが、ご家族や恩師をはじめとする関係者の方々の支援があったからこそ、成し得たものでもあります。言うまでもなく、皆さんの最終目標が大学に入学することではないはずです。未来社会を生き抜く知識、知恵、そして適応能力を身につける4年間、あるいは6年間でなければなりません。であればこそ、晴れて大学生となった今、関係者への感謝の気持ちを忘れずに、自己研鑽に励む大学生活を送る決意を、新たにしていただきたいと思います。
皆さんのこれまでの学びのフィールドは、家庭と学校あるいは予備校が中心で、受け身的な学びがほとんどだったと思います。これからの学びのフィールドは、大学内にとどまらず、 地域、国内、そして海外へと、皆さんが望めば無限に広がっていきます。学びのスタイルもまた、自分で授業を組み立て、必要な単位を修得していくなど、自発的な学びが求められます。日常生活も同様です。多くの皆さんが、慣れ親しんだ土地、そして何より親元を離れ、ひとり暮らしを始めます。掃除、洗濯、食事、金銭の管理、サークル、アルバイト、さらにはボランティア活動など、日常生活のすべてを、自分の意志かつ、自己責任で行わなければなりません。とは言え、皆さんは社会人としてはまだまだ未熟です。その未熟さにつけ込まれ、大学生が特殊詐欺などの犯罪に巻き込まれるケースが、最近、増えています。トラブルに巻き込まれた時、また奨学金や生活費、さらに健康面での不安など新生活で困った時には、ひとりで抱え込まずに、大学の相談窓口に遠慮なく相談してください。大学の主役は学生の皆さんであり、皆さんの存在で弘前大学は成り立っています。本学の教職員一同が、皆さんの学びと生活を全力で支援することを約束いたします。
いよいよ今日から、ここ弘前の地を舞台として、皆さんの新しい物語がスタートします。自主的な学びはもとより、勇気をもって様々なことに挑戦を繰り返す中で、皆さん自身の成長を実感できるような大学生活を、心から願っています。皆さんが座っている席の両隣をみてください。今、この瞬間から、偶然・必然な出会いを楽しみながら、良き師、良き友との絆をたくさん築いていってください。
最後になりますが、重ねて大きな祝意をもって皆さんを歓迎するとともに、弘前大学そして弘前市で学び・暮らす学生生活が、一人ひとりの生涯にわたる貴重な財産となりますよう、心から祈念して、入学式の告辞といたします。
令和5年4月5日
弘前大学長 福田 眞作