弘前大学

「リンゴの機能性表示食品の開発」で第46回園芸振興奨励賞受賞(被ばく医療総合研究所)

2021.06.29

(国研)農研機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域ユニット長の庄司俊彦氏を代表とする「リンゴ機能性表示食品開発グループ」が取り組んで来た「リンゴの機能性表示食品の開発」の活動が評価され、公益財団法人園芸振興松島財団 2020年度第46回園芸振興奨励賞を受賞しました。
本学では被ばく医療総合研究所の三浦富智教授、研究補助員の佐藤佑樹さんがメンバーとして参画しています。
本グループは、リンゴに含まれるポリフェノールの一種「プロシアニジン」に着目し、2015年4月に施行された機能性表示食品制度を活用することで、新たな市場の開拓や高付加価値化を目指し、研究成果の社会実装に取り組んできました。
その結果、JAつがる弘前よりリンゴとしては第一例目となる「プライムアップル!(ふじ)」が2018年3月に、続いて「プライムアップル!(王林)」が2019年2月に消費者庁に受理され、内臓脂肪を減らす機能性表示食品として販売されています。
本グループの活動は、リンゴの機能性表示及び高付加価値化に貢献するだけではなく、今後の機能性に着目した農産物の普及や加工品開発、また、リンゴ生産地域や産業全体に広く波及すると期待されます。
賞状

研究概要

本グループでは、農研機構が開発したプロシアニジン分析法(特許第658741号)を用い、リンゴやその加工品に含まれる機能性関与成分プロシアニジンを分析することによって、青森県から生鮮リンゴ2件(ふじ、王林)、長野県からリンゴ加工品2件(混濁ジュース、ドライフルーツ)が機能性表示食品として消費者庁に受理された。さらに、非破壊計測によるリンゴ果実中のプロシアニジン測定技術の開発や、機能性表示食品の届出支援、普及活動など、リンゴの機能性表示に道を開く取り組みが評価され、今回の受賞に至った。
このうち、弘前工業研究所では、JAつがる弘前管内で栽培されたリンゴ1200個以上を用いて、生産年度、品種、階級(サイズ)や等級による違いやCA貯蔵中の変化などについて、機能性成分プロシアニジンを測定し、その含有量やバラツキを調査することで、機能性表示食品の裏付けとなるデータを収集した。
弘前大学では、リンゴとして第一例目となる機能性表示食品「プライムアップル!(ふじ)」、続いて「プライムアップル!(王林)」の届出資料作成を支援し、そのノウハウを届出作業マニュアルとしてまとめた。また、リンゴ生産者を対象とした「機能性表示食品」の認知度アンケート調査、及び経営効果調査を行い、リンゴの機能性表示が農家の収益増加にもたらす可能性を見出した。
JAつがる弘前では、機能性表示食品を目指す上で必要となるリンゴのプロシアニジン含有量を把握するためにリンゴを提供し、機能性表示食品2件(「プライムアップル!(ふじ)」、「プライムアップル!(王林)」)が消費者庁に受理されるに至った。これに加え、果枝の剪定・摘果などを調整する栽培法を検証し、機能性表示が可能なリンゴ「プライムアップル」の生産割合を高めうることができた。

受賞者リスト

・農研機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域 ユニット長 庄司俊彦
・青森県産業技術センター 弘前工業研究所 技術支援部 研究管理員 高橋匡
・弘前大学 被ばく医療総合研究所 教授 三浦富智、研究補助員 佐藤佑樹
・JAつがる弘前 指導部 部長 對馬郁夫、課長 廣田寛央、(元)係長 石山敬、りんご部 部長 齋藤誠
・福島大学 食農学類 准教授 升本早枝子
・東京大学 農学生命科学研究科 助教 吉村正俊
・長野県農村工業研究所 農業開発研究部 部長 竹内正彦
・JAアオレン 開発研究部 部長 成田良樹、田中達也
・長野興農株式会社 営業部開発課 課長 木内佳奈
・森食品工業株式会社 品質保証部 山川満
・シブヤ精機株式会社 技術統括本部 部長 二宮和則、山本健太郎

グループ構成員の役割

・農研機構、青森県産業技術センター:プロシアニジンの分析と解析
・弘前大学、農研機構、福島大学:機能性表示届出支援および届出作業マニュアルの作成
・JAつがる弘前:機能性表示食品に適応した栽培方法の検討
・東京大学、シブヤ精機:リンゴ果実中プロシアニジンの非破壊検査技術の開発
・長野県農村工業研究所:機能性表示食品に対応した加工技術の開発
・JAアオレン、長野興農、森食品工業:機能性表示食品に対応したリンゴ加工品試作

備考(公益財団法人園芸振興松島財団 振興奨励賞について)

公益財団法人園芸振興松島財団は、青果物の生産から流通経営にいたる調査、研究、技術開発及びその普及に対する助成、奨励、表彰等の事業を行うことにより、学術の振興と国民の希求する青果物の安定供給を図り、もって明るい豊かな社会の形成に寄与することを目的とした財団。振興奨励賞は、わが国における青果物の生産、流通および消費に関する開発・普及などの活動で、これまでに社会的成果を上げたもの、ないし今後期待されるものに対して授与される。