弘前大学

田中誠二博士・管原亮平助教らが執筆した「バッタの大発生の謎と生態」が出版されました

2021.09.02

本件のポイント

 本学OBの田中 誠二 博士および本学農学生命科学部 助教の管原 亮平 博士らが、「バッタの大発生の謎と生態(北隆館)」を2021年4月20日に出版しました。本著は、2020年に注目を集めたサバクトビバッタの大発生や、バッタの相変異をはじめとする多くの生物学的現象を扱っており、主に著者らの研究を概説しながら議論を深めています。著者らの着想のきっかけや研究中のやりとりも織り交ぜながら話が展開するため、昆虫の研究者がどのように実験に取り組んでいるのか高校生や若手研究者にも参考になると思われます。

本件の概要

【背景と経緯】
 弘前大学の昆虫学研究室は、故 正木 進三 教授を中心として多くの昆虫研究者を輩出してきました。田中 誠二 博士は正木 教授の教え子であり、弘前大学修士課程修了後はアメリカで博士号を取得後、つくば市にある農水省系の研究機関で多くの研究成果をあげました。中でもトビバッタの研究は、管原 助教を含む当時の若手研究者と共に様々なテーマに取り組み、世界のバッタ研究を牽引してきました。2020年にサバクトビバッタの大発生に注目が集まると、日本のバッタ研究についても関心を持たれるようになったため、本著を出版するに至りました。本著は、田中博士および管原助教に加え、徳田 誠 准教授(佐賀大学)、原野 健一 教授(玉川大学)、西出 雄大 主任研究員(農研機構)により執筆されました。
【書籍の内容】
 混み合うと見た目や行動、生理状態が変化するバッタのことトビバッタといい、その現象は相変異として知られています。本著ではサバクトビバッタとトノサマバッタの研究を主に取り扱っています。まずサバクトビバッタの生態について概説するとともに、大発生のメカニズムや防除法について説明しています。さらに、トビバッタの起源や、相変異のメカニズム解明に向けて、行動学的、生理学的、分子生物学的研究手法での奮闘に焦点を当てています。中でも、体色を制御するホルモンを発見する過程での、様々な困難や偶然、海外研究者とのやりとりは興味深いです。加えて、バッタの食事・産卵・孵化について、疑問を持ったきっかけ、研究の計画を立案する過程、その結果についてわかりやすく解説しています。これまで著者らの研究グループは、公表されて定説となった研究結果についても疑義を唱え、それらを覆すような成果をあげてきました。その難しさや苦悩についても赤裸々に描写し、臨場感をもって研究活動の大変さや醍醐味を味わうことができます。
【今後の予定・期待】
 サバクトビバッタの大発生は東アフリカやアラビア半島で深刻化しましたが、それらの研究は弘前大学とゆかりがある研究者によって推進されてきたため、地理的には大きく離れているが弘前とは無縁ではないでしょう。安藤喜一名誉教授の「カマキリに学ぶ」出版と併せて、本学の昆虫研究が改めて注目されるきっかけになると期待されます。
九州大学名誉教授 湯川淳一先生から書評をいただいています。
http://odokon.org/archives/2021/0730_213200.php

書籍情報

「バッタの大発生の謎と生態」田中誠二編(元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所)
定価:3,190 円(本体 2,900 円+税)
発売日:2021.04.20
A5 判・並製・300 頁・北隆館
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