弘前大学

弘前大学有識者懇談会(平成28年1月19日)

「世界に発信し,地域と共に創造する弘前大学」

有識者懇談会

 各方面で活躍する有識者と学長との対談を行い,本学の理念である「世界に発信し,地域と共に創造する弘前大学」を実現するため,「地方創生の取組と国立大学の役割」及び「地域と共に目指す地方大学の特色あるグローバル化」をテーマとして,弘前大学を取り巻く現状を踏まえた今後の目指すべき方向性について,様々な角度から意見をいただきました。

出席者

  • 岡井 眞(経営協議会学外委員,岡井公認会計士事務所所長)
  • 加藤 丈夫(経営協議会学外委員,国立公文書館長)※「丈」の右上に点
  • 熊地 貴志(経営協議会学外委員,(株)みちのく銀行取締役兼専務執行役員)
  • 永澤 弘夫(経営協議会学外委員,弘前商工会議所会頭)
  • 米田 洋次(経営協議会学外委員,(株)東奥日報社弘前支社長)
  • 佐藤 敬(国立大学法人弘前大学長)

「地方創生の取組と国立大学の役割」について

佐藤学長

 地方の力が落ちていく中で,本学が掲げるスローガン「世界に発信し,地域と共に創造する弘前大学」のように,大学は地方創生にもっと力を発揮すべきといわれている。本学では,文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+事業)」に採択され,県内の大学,短大,高校専門学校及び地方自治体の協力をいただきながら,100を超える企業・団体と提携して,卒業生の地元就職率を向上させ地域に就職する若者を増やす取組みをスタートしている。弘前大学においては以前よりそのようなコンセプトは持っていたが,本事業によって加速し,さらに強化していくものと考えている。
 このような状況をふまえて,弘前大学では地方創生に大きな役割を果たしていきたい。


加藤氏

 地方創生の取り組みと国立大学の役割に関しては,「産学官金」の連携をもう一つ進めるべきである。持論だが,特に地方においては「産学官金」の中で「学」がリーダーシップをとって連携を図って取り組むことが必要であり,都市圏とは違う取り組みが期待される。例えば,プロテオグリカン等の実用化について連携が進んでいるようだが,「産学官金」として具体的に何をやるかが見えてこない。大まかなテーマでもよいのでメニュー作りをすることが必要ではないか。その際に,21あおもり産業総合支援センターとの具体的な連携を進めるべきではないかと思う。


永澤氏

 東北・北海道地区の会議に出席すると,地方における人口減少が大きな問題として取りあげられている。この問題については,国や日本商工会議所も真摯に取り組んでいると言っているが,具体的な事例は示されていない。都市圏に人口が集中する中で,弘前市においても,将来的に予想される大幅な人口減少に伴い,商売が成り立たなくなることや若者がいなくなること等の危機感を持っている。
 これらのことから,商売について新たな考え方を取り入れていく必要があり,例えば農業関係であれば,力のある農業を行うために,大規模農業やブランド化の推進等を実施することなどが考えられる。地元の経済界においても現状を打破する必要性を強く認識しており,我々としても大学に対し具体的な希望を示していきたい。地域毎に光り輝く生業をすすめるためには,自ら研究して自尊心を持った仕事をしていく必要があるため,大学との連携を強めながら,このような方向に向かっていきたい。
 また,地方創生の一環として,近年増加している貧困家庭に対する支援活動を実施するが,この活動を通じて,弘前は住みやすい町であることを実感してもらい,子供たちの教育のレベルアップにも繋げていきたい。
 我々としては,これからも弘前大学を支援し連携しながら,これらの活動に取り組んでいきたいと考えている。


米田氏

 かつてグローカルという言葉が流行し,当社においても,軸足は青森県に置きながら,世界を俯瞰して世界に発信する情報をふんだんに盛り込んだ紙面を作ってきたが,弘前大学が目指している「世界に発信し,地域と共に創造する弘前大学」と重なり合うので,そのような想いでいつも弘前大学を見ている。
 弘前大学がそれを実現させるためにも,地元青森県民に支援されるような大学になっていただきたい。支援される大学とは,青森県民が何かを求めた時に応えてくれる大学である。そのためにも,弘前大学の研究者や研究内容が閲覧できるデータベース化をすすめていただき,青森県民にアピールしてほしい。


熊地氏

 東北大学の学生の就職状況として,95%が都市圏,5%が仙台市に就職するとの話しを聞いた。地元にも素晴らしい中小企業が多数存在するが,学生は分からないようである。以前面接を行った際に,東京の大企業より,地元企業の方が力を発揮できるのではとすすめたが,東京に行きたい想いを強く感じた。
 例えば,将来的に優れた人材が地方に就職してもらうことを想定し,都市圏と地方の大学間において学生交流(交換留学)ができるカリキュラムを作ってはどうか。このことで,地方の大学生が東京を経験して視野を広げたり,都市圏の大学生が地方の生活の豊かさを経験することができるのではないか。
 また,弘前は雪深い地域につき,工場を造っても運搬等でデメリットが生じるため,これらの影響が少ないIT産業を立ち上げることが必要と考える。そのような人材を集めるためにも,地方の教育機関を充実することが重要である。
 あわせて地方創生の話題として挙げられることの多い観光等も含め,若い世代が働きたいと思える環境を作っていく必要がある。


岡井氏

 弘前大学が最も目指すべきことは,この地域で働きたいと思った人が働けるようにすることであるが,そのためには企業とその経営者が必要となる。
自分の経験上,学生は最初から進路が決まっているわけではなく,様々な人達との関わり悩みながら決めていくものである。その中で,経営者になるためには,勉学で基礎を学び,様々な経験を積むことが重要である。なお,弘前大学人文学部では座学だけでなく,外(企業)へ出て学ぶ実習を行っているが,この取り組みを大いにアピールしていただきたい。
 また,地方創生をすすめるためには,人が残らないといけないが,卒業後は出身地へ戻る傾向がある。このため,県内の企業が魅力有るものにならなければならないので,弘前大学も協力していただきたい。
 人口減少の問題については,どの分野においても課題となっており,弘前大学には課題解決に向けた対策に係る協力をしてほしい。
 今の子供たちは生まれたころからパソコンに接してきているので,先ほど話題のあった地域におけるIT産業の立ち上げは非常に良い案である。弘前大学のもつ豊富な技術や知識を是非生かしていただきたい。期待している。


加藤氏

 「将来ビジョン」策定の際も申し上げたが,発想が内向きになっていないか懸念するところである。卒業生の定着やUターンだけではなく,他の地域の人達を迎え入れる街づくりが必要であり,そのことについて大学が主導してほしい。あわせて,どうしたら外国人が住み着いてもらえるかを考えていくべきである。
 他から魅力のある人材がどんどん入ってきて,街づくりに貢献すれば,そのことが地元出身者の地元定着にも繋がるのではないか。


佐藤学長

 弘前大学の卒業生のうち,約30%が青森県内に残っているが,これを40%に増やすことを命題として追求している。それだけでなく,他から見て魅力ある地域づくりに大学がどうやって貢献していくのかが重要な視点である。


佐藤学長

 先ほど熊地委員からお話しがあったように,地元企業の魅力を学生に知らせていくことが必要である。本学がこの度採択された「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+事業)」では,インターンシップを更に強化することとしている。これは教育型インターンシップと呼んでいるが,学生を企業に出し就職に繋げるといった目先の目標ではなく,地域で人を育てるシステムを大学と企業が一緒になって高めていこうというものであり,その結果,この地域で働くことを希望する学生が増えればそれが一番理想的である。
 なお,学生が大学を離れて自主的に学修するインターンシップ等の成果は,我々も必ずしも把握できていないところであるが,これを検証し見直しつつ取組みを進めていく必要があると思っている。
 また,平成28年度から,全ての学生が地域に出ていく地域課題解決型の教育を,教養教育に取り入れて開始することになっており,それを検証しながら成果を上げていきたい。


加藤氏

 首都圏の窓口である東京事務所は,地方創生と結びつくような具体的な活動や成果をあげていく必要がある。窓口機能として,東京事務所を更に活用していくべきである。
 東京事務所は,具体的な新しいテーマを持って活動出来ればよいと思う。


永澤氏

 地方創生の課題として,収入の問題がある。地域によっては,水産業や農業で多額の収入を得ているところもあるが,この地域では,キラリと光る企業が限られている。ついては,食に関連する大規模企業を立ち上げて,情熱のある人材を集めることも必要ではないかと考えている。
 様々な対応策が考えられるが,最後は安定した収入が得られるかどうかが最も重要となる。


熊地氏

 例えば,都市圏の場合,子供の面倒を見てくれる環境が無いことから一人で働かざるを得ない状況にあり必然的に給与単価が高い企業を選択することになる。この地域において子供を安心して預けることが出来る環境や仕組みを整備し,夫婦で働くことができれば,都市圏より単価が低くても,二人分の収入を確保することができる。


加藤氏

 日本一の短命県を脱することは,大きな目標であると思う。長野県が主導を重ねることで長寿県に生まれ変わった例もあるので,例えば青森県においても農業を軸として生活を変える試みを進めることで,結果として地方創生のポイントになるのではないか。


熊地氏

 例えば,農薬を使用しない自然農法を行う等の付加価値を付けることで,都市圏や外国の健康志向の方が高く買ってくれるかもしれない。
 鹿児島県では農業生産における加工率が約20%とのこと。青森県は数%であるため,この率をさらに伸ばすことで,雇用を生み出し,付加価値も見いだすことが期待される。


永澤氏

 農業生産の加工に力を入れていくことは,良いことである。例えば,仙台の牛タンはアメリカ産の牛肉を加工したうえで,付加価値を付けてブランド化している。この加工の部分で弘前大学の英知を活かせるのではないか。


熊地氏

 例えば加工品のパッケージは,都市圏の業者に依頼するとか,または,地元の業者に作成してもらうのか,検討が必要なところである。


「地域と共に目指す地方大学の特色あるグローバル化」について

佐藤学長

 本学では外国人留学生を増やすため努力しているところだが,外国に行かなくても多様な環境下で勉強できるため,日本人学生の学修にも重要であると認識しており,外国人教員を増員して教育を英語で行うなどの取り組みも進めている。
 なお,本学の元留学生が再来日して弘前市内に就職した事例もあり,このような事例が増えてほしいと願っている。
 また,ある地方大学では地域国際学部を創った例があるが,弘前大学では地域のグローバル化を先導するため,農学生命科学部国際園芸農学科の設置や起業(アントレプレナーシップ)の分野に力を入れる等,これまでの学問体系の中で強化していく道を選んだ。さらに,弘前の産業はすでに世界につながっており,この地で今後仕事をしていく上ではグローバルは必要な視点であることを学生には日々伝えている。
 これらのこともふまえて,弘前大学が目指すグローバル化とは何か,ご提言等があればいただきたい。


加藤氏

 弘前大学が抱える重点研究テーマに外国人を参加させてはどうか。財政補助をしたうえで外国人を招聘し,大学の研究推進チームに意識的に組み入れる等ができれば具体化するのではないか。


佐藤学長

 例えば,被ばく医療の研究は海外の需要も大きい。原子力発電を強化しようとする国は多いが,事故に対する備えは十分ではない。現状として本学の研究者として迎えるには至っていないが,本学に留学して勉強したいとの希望は非常に多い。


加藤氏

 被ばく医療の研究は世界的に需要がある。このことがグローバル化強化のきっかけになるかもしれない。


佐藤学長

 このほかに,「食」をポイントとして農学生命科学部に外国人教員を強化し,国際的に認証されているHACCPに対応した人材を育成することを考えている。
 また,現在弘前大学の留学生は中国人が多いが,本学の教員・事務職員が弘前大学をアピールするため,海外の大学に出向いてフェアを開催した際,特に欧州圏(ドイツ,フランス)の大学において,弘前大学に対するアフィニティが高いことが分かったので,今後は弘前大学の特徴としてこれらの国々とも更に交流を深めて留学生数を伸ばしていければと考えている。


永澤氏

 今後更なる発展が期待されるベトナムやインドネシア等の東南アジアにも目を向けるべきではないか。また,我々もサポートするので,東南アジアやヨーロッパに弘前大学の学生を留学させ,広い視野を持たせてほしい。


米田氏

 他県の方から,「なぜ弘前大学が被ばく医療なのか?」と質問されたことがあり,各方面で注目されていることが伺われる。引き続き被ばく医療の研究をすすめることで,世界の注目を集めていくことが期待される。


熊地氏

 先ほど話しのあったHACCPのような世界で通用する認定等の取得について,大学で指導できれば良いと思う。


岡井氏

 台湾から直接農家にリンゴの買い付けにきた事例があること,ある企業ではベトナム人を職員寮に入れて仕事をさせているが外との付き合いがほとんど無い状況にあることなど,青森県内においても多数の外国人がいるので,是非これらの外国人と交流する機会が設けてはどうか。これからのグローバル化を想定し,学生への英語会話習得に力を入れてほしい。


佐藤学長

 現在弘前大学の留学生は約150人で過去最大であるが,本学の規模からするとまだまだ少ない状況にある。今後も留学生を増加させていく意向であるが資源のこともあり,すぐには達成できないのが歯がゆいが,少しずつでも増加を目指すところである。また,中国ばかりに依存せず,ヨーロッパや東南アジアとの関係も強化していくことが重要であると認識している。なお,大学と金融機関との連携により本学の教職員・学生が先日ベトナムに行っており,東南アジアとの関係強化につなげたい。さらに,弘前大学と台湾は交流実績が無いが,弘前市が台湾と関係があることから,台湾についても留学生を増やしていければと考えている。
 それから,留学生は地域の方々のお世話になっているケースが多いが,今後は留学生が積極的に地域活動に出て行くようにしていきたい。
 本学から海外留学する学生も近年増えており,一昨年は過去最高であった。まだまだ海外留学を希望する学生は少ないものの海外留学をサポートするシステムが充実してきている。文部科学省事業の「トビタテ!留学JAPAN」は,大きな企業から寄附金を募り海外留学に助成している制度で、これを更に活用していかねばならない。また,一昨年より弘前市と弘前商工会議所の協力のもと,短期間ではあるが本学学生を海外へ送り出すための基金として「学都ひろさき未来基金」を設立いただいており,文部科学省からも高い評価を得ている。
 厳しい状況下でグローバル化をすすめる必要があり,且つ着実に留学生数を増やしていけるものと考えているので,引き続き御協力をお願いしたい。


弘前大学有識者懇談会の様子

 以上,長時間になりましたが,弘前大学の取り組みを御理解いただきながら,アドバイス等もいただきました。今後も引き続き,御助言等いただきますようお願いいたします。
本日はありがとうございました。

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