弘前大学

【プレスリリース】プロバイオティクスを含む乳製品摂取による回腸末端部での細菌叢の動態を確認(医学研究科)

2020.07.06

プロバイオティクス※1を含む乳製品摂取による回腸末端部での細菌叢の動態を確認
~ERBI※2を回腸末端部の環境変化を解明する目的で導入~

株式会社ヤクルト本社(社長 根岸 孝成)と、国立大学法人弘前大学(学長 福田 眞作)は、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株(以下、L.カゼイ・シロタ株)を含む乳製品の単独摂取、ビフィズス菌ビフィドバクテリウム ブレーベ ヤクルト株(以下、B.ブレーベ・ヤクルト株)を含む乳製品の単独摂取および両乳製品の同時摂取が、回腸(小腸の後部)末端部の細菌叢構成に及ぼす影響を、内視鏡的逆行性腸管挿入法(以下、ERBI)により調査しました。その結果、以下の3点が明らかとなりました。

  1. 乳製品の摂取により、製品中のL.カゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株が回腸末端部まで到達し、摂取後1.0~5.5時間にわたりL.カゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株のいずれかまたはその両方が細菌叢の90%以上を占有するケースが確認されること
  2. L.カゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株は、コロニー形成能(代謝活性を有し、増殖可能である状態)を有したまま、回腸末端部まで到達すること
  3. ERBIがヒトの回腸末端部における細菌叢の経時変化の評価に有用であること

これまでは糞便を用いて細菌叢および代謝産物の分析を行っていましたが、ERBIの導入により、回腸末端部の細菌叢構成を経時的に解析できることが分かりました。今回得られた結果から、摂取した食品中のプロバイオティクスの回腸末端部での動態や細菌叢の構成を把握することは、今後プロバイオティクスを含む食品の機能性を解析するうえで非常に重要であると考えられます。本研究結果は、学術雑誌「Gut Microbes」(2020年6月19日付)に掲載されました。
※1 十分量を摂取したとき、宿主に有益な効果をもたらす生きた微生物
※2 大腸内視鏡を使って、灌流用のチューブを肛門から逆行的に挿入して回腸末端部に留置し、経口摂取された飲料等、回腸末端部まで流れ着いた内容物を灌流液と共に吸引して採取する方法
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