弘前大学

【プレスリリース】自然界の「ムダの進化」が生物多様性を支える(農学生命科学部)

2020.07.10

自然界の「ムダの進化」が生物多様性を支える
生物種の個体数増加に寄与しない利己的な性質の進化が導く多種共存

【発表のポイント】

  • 自然界でこれほど多様な生物種が共存できるのはなぜか、「競争強者」が「弱者」を排除してしまわないのはなぜか、生態学の重大な未解決問題を解く理論の提案。
  • 多くの生物(特にオス)に見られる色鮮やかな模様、求愛ダンス、歌、巨大な角など、種内に生じた「ムダの進化」が鍵。
  • 「ムダの進化」によって、異種間の競争の影響が緩和され、その結果、多種の共存が促進されうることを理論的に提示。
  • 種間競争を重視する従来の見方とは対照的な生態系観の提案。

【概要】
⽣物の装飾や求愛⾏動などの適応的特徴の進化は、その個体にとっては有利でも、種全体の増殖率への貢献は期待できないことから、種の繁栄にとっては、いうなれば「ムダの進化」です。東北⼤学⼤学院⽣命科学研究科の近藤教授、クイーンズランド⼤学⼭道上級講師のほか、兵庫県⽴⼈と⾃然の博物館、理化学研究所数理創造プログラム、京都⼤学、千葉⼤学、琉球⼤学、弘前⼤学、東京⼤学の研究者からなる共同研究グループは、この「ムダの進化」こそが、⾃然界で競争排除を⽣じにくくしている要因である可能性を理論的に⽰しました。本研究では、これまで⽣物多様性との関係が省みられることのなかった要因が、種多様性の維持にとって重要であることを明らかにしたという斬新な成果を得ました。
本研究結果は7 ⽉9 ⽇のTrends in Ecology & Evolution 誌(電⼦版)に掲載されます。
本研究はJSPS 科研費JP16H04846「ムダの⽣態学:種内競争による形質進化が多種共存に及ぼす影響の解明(代表近藤)」の助成を受けたものです。
(本学研究者 農学生命科学部 山尾僚助教)
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