弘前大学

寄生虫は“本命の魚”を選ぶ ― ウオノエ類が宿主を見分けていることを水槽実験で証明

2026.01.21

プレスリリース内容

本件のポイント

  • 弘前大学農学生命科学部の曽我部篤准教授と北海道教育大学釧路校の川西亮太准教授らの研究グループは、魚類に寄生するウオノエ科等脚類の一種サヨリヤドリムシが、宿主 を探索して遊泳する子ども(幼生)の時期に、好みの魚種を選んでいることを実験的に明らかにした。
  • サヨリヤドリムシのマンカ幼生に、主要宿主であるサヨリとそうでない魚(クロダイまたはメジナ)を選択させると、ほぼ例外なくサヨリに寄生した一方、主要宿主ではないクロダイとメジナだけを提示すると、寄生自体がほとんど起こらず、むしろこれらの魚に頻繁に捕食されていた。
  • 本研究は、ウオノエ科における宿主への選択的な寄生を明確に示した初の事例であり、ウオノエ科の初期生活史や寄生虫と宿主の進化的な関係を理解する上で重要な知見を 提供する。

本件の概要

寄生生物にとって、寄生に適した宿主を見分け、選択的に寄生することは、その後の成長や繁殖の成否を大きく左右します。ウオノエ科等脚類は、魚の体表や口の中、えらなどに寄生して生活する甲殻類の仲間で、マダイやアジ、サヨリなど食卓にのぼる身近な魚にも寄生することから一般にも認知度が高い寄生生物ですが、その初期生活史についてはあまり分かっていません。サヨリヤドリムシMothocya parvostis(図1)は、その名が示すとおり主にサヨリに寄生しますが、感染期の幼生(マンカ)はクロダイやメジナなどサヨリ以外の魚にも寄生している事例が自然界では知られています。そのため、サヨリヤドリムシが本当にサヨリを選択的に宿主としているのか、それとも無分別にさまざまな魚に寄生し、その中で運よくサヨリに寄生できた個体だけが生き残っているのかは、これまで明らかになっていませんでした。

図1

図1

そこで、弘前大学大学院農学生命科学研究科の関海斗さん(当時修士課程2年生)、弘前大学農学生命科学部の曽我部篤准教授、 北海道教育大学釧路校の川西亮太准教授からなる研究グループは、水槽を用いた飼育実験により、サヨリヤドリムシが宿主をどのように選択するのかを検証しました。

本研究では、宿主選択実験を3通り実施しました(図2)。1つ目と2つ目の実験では、主要宿主であるサヨリと、非主要宿主であるクロダイまたはメジナを同時に水槽に入れ、サヨリヤドリムシのマンカがどちらの魚に寄生するかを調べました。

その結果、寄生が起きたほぼすべての試行でマンカはサヨリを選び、クロダイやメジナへの寄生はごくわずかでした。3つ目の実験では、非主要宿主同士であるクロダイとメジナだけを水槽に入れましたが、マンカはいずれの魚にもほとんど寄生しませんでした。また、 実験中にクロダイやメジナはマンカを頻繁に捕食した一方、サヨリによる捕食は一度も確認されませんでした。

図2

図2

これらの結果から、サヨリヤドリムシのマンカは、利用可能な魚に無作為に寄生するのではなく、主要宿主であるサヨリを積極的に選好して寄生していることが明らかになりました。また、自然界でみられる非主要宿主への寄生は、捕食回避のために起きている可能性が示唆されました。本研究は、ウオノエ科等脚類において、宿主を能動的に選択していることを明確に示した初めての成果であり、ウオノエ科の初期生活史や寄生虫と宿主の進化的な関係を理解する上で重要な知見を提供します。

この研究成果は、2026年1月11日(日)「Parasitology International誌」のオンライン版に掲載されました

詳細

プレスリリース本文は こちら(483KB)

取材に関するお問い合わせ先

弘前大学農学生命科学部 准教授 曽我部 篤
TEL:0172-39-3950
E-mail:atsushi.sogabehirosaki-u.ac.jp