日本のミミズは南で種多様性が高く、南に分布する種の一部が 北に分布を広げたことで北のミミズ群集が形成された
2026.05.13
研究
プレスリリース内容
本件のポイント
一般に、種の多様性は低緯度の地域ほど高いことが知られています。しかし、土の中の動物については、種多様性の緯度パターンに関する研究はほとんど行われていませんでした。弘前大学大学院農学生命科学研究科修士課程2年の念代周子さん、池田紘士准教授(現在、東京大学大学院農学生命科学研究科教授)、京都大学修士課程2年の佐藤千佳さん、曽田貞滋教授、大阪公立大学の奥崎穣准教授、国立科学博物館の長太伸章特定研究員、栃木県立博物館の南谷幸雄主任研究員、弘前大学大学院教育学研究科修士課程2年の宮野純さん(各肩書きは研究当時)は、日本に生息するミミズの種多様性の緯度パターンを調べ、南の方が種数が多く、南に生息する種のうち単為生殖の可能な種が北に分布を広げたことで、現在の種多様性の緯度パターンが形成されてきたことを明らかにしました。
この研究成果は、日本時間2026年5月8日 に、「Soil Biology & Biochemistry」誌に掲載されました。
本件の概要
研究の背景
種多様性が低緯度ほど高いことは多くの動物で知られていますが、土壌中の動物については、分解者が多く生態系内で重要な役割を果たしている種も多いにもかかわらず、研究がほとんど行われていませんでした。この土壌動物の中でもミミズは大型で、落ち葉などを食べる分解者として重要です。日本は南北に長いことから、温帯の種多様性の緯度パターンを調べるのに適していると考えられます。日本に生息するミミズは形態の特徴によって100種以上に分けられ、その種多様性はヨーロッパなどの他の地域に比べても非常に高く、その大半はフトミミズ科とツリミミズ科が占めます。しかし、ミミズは成体(=大人)にならないと形態に特徴が表れず、種を同定するのが難しいこともあり、種多様性の地理的なパターンはわかっていませんでした。本研究では、土壌動物の代表としてミミズを対象とし、遺伝子解析によって作成した系統樹を用いて種を分ける手法を行い、日本列島におけるミミズの種多様性の地理パターンの把握を試みました。
研究の内容
北海道から九州までの草地、人工林、二次林、天然林の計126地点から得られた3490個体のミミズについて、系統樹をもとにして種を分けました。その結果、全部で122種に分けられ、その大半の113種をフトミミズ科が占めました。また、フトミミズ科の種数を6つの地域に分けて比較したところ、南の地域の方が種数が多いことがわかりました(図1)。この種数の多さは、南の地域のみに分布する種が多いことが原因でした。そして、南に分布する種のうちの一部の種が北にも生息することで、北の地域のミミズ群集が形成されていました。この南の方が種数が多いという緯度パターンが形成された要因について環境条件との関係を調べたところ、温暖で降水量が多く、積雪の少ない地点でミミズの種が多いことによって、緯度パターンが形成されていることがわかりました。

図1. 採集地点(○)と、地域ごとのフトミミズ科とツリミミズ科の種数。棒グラフ中のカッコ内の数値は地点数。
ツリミミズ科は地域D~Fでほとんど採集されなかったため、3つの地域を合わせた種数を地域Dに示してある。
また、どのような種が北に生息しているのかについて、フトミミズ科の生態との関係を調べました。その結果、一個体だけで子孫を残すことのできる単為生殖の可能な種が、北に分布を広げてきたことがわかりました。このような要因によって、日本全体における現在のミミズの分布パターンが形成されてきたことがわかりました(図2)。
本研究の意義と今後の展開
本研究により、日本のミミズの大半を占めるフトミミズ科では、種多様性が南ほど高く、一部の種が分布を北に広げたことによって現在の種多様性の緯度パターンが形成されてきたことを明らかにしました。本研究では形態からの種の同定が難しい種に対して系統樹を用いた手法で種を分けましたが、形態からフトミミズ科の種はこれまでに130種が知られており(https://japanese-mimizu.jimdofree.com/)、その種数ともおおむね一致したことから、本研究で種を分けた結果は妥当であったと考えられます。本研究により、日本の土壌動物における種多様性の緯度パターンとその形成の歴史を初めて明らかにすることができました。本研究で明らかにされた種多様性の緯度パターンの形成過程は、土壌動物のような分散能力の低い種においてはある程度共通するパターンである可能性があり、本研究によってその代表例を示すことができました。
論文情報
■ 著者:Noriko Nendai, Chika Sato, Teiji Sota, Yutaka Okuzaki, Nobuaki Nagata, Yukio Minamiya, Jun Miyano and Hiroshi Ikeda(念代周子、佐藤千佳、曽田貞滋、奥崎穣、長太伸章、南谷幸雄、宮野純、池田 紘士)
■ 掲載誌:Soil Biology & Biochemistry
■ DOI:10.1126/sciadv.aee2813
詳細
プレスリリース本文は こちら(1MB)
お問合せ先
東京大学 農学部 森林科学専攻 森林動物学研究室 教授・池田紘士
TEL:03-5841-5217
E-mail:hiroikedag.ecc.u-tokyo.ac.jp
※メールでお問い合わせいただけましたら、内容説明につきましてはZoom等でも対応いたします


背景色
文字サイズ
Language