弘前大学

吉澤 篤 名誉教授が「2023年度日本液晶学会 功績賞」を受賞

2023.09.21

弘前大学の元企画担当理事・副学長 吉澤 篤 名誉教授が「2023年度日本液晶学会 功績賞」を受賞し、その授賞式が2023(令和5)年9月12日(火)に東京理科大学にて開催されました。

本賞は、日本液晶学会の発展に指導的な役割を果たすとともに、液晶に関する科学および技術の基礎的研究およびその実際的応用に対し特に顕著な貢献をした個人に授与されるもので、吉澤 名誉教授は「液晶材料の合成と物性評価、液晶性材料の機能開発などに関する研究において顕著な業績を残したこと」などが高く評価されました。

賞状と盾を持つ吉澤 名誉教授

■ 受賞理由(日本液晶学会誌「液晶」2023年, 第27巻, 第3号, 154ページからの抜粋)
「多彩な分子設計に基づく新しい液晶の世界の創造」
吉澤 篤 氏は、液晶材料の合成と物性評価、液晶性材料の機能開発などに関する研究において顕著な業績を残した。階層構造や散逸構造の発現を指向した新しい液晶相形成の方法論を開拓するとともに、多方面で検討されているキラリティー伝達の制御の仕組みを液晶相で研究した。さらに、上記の知見を基に、次世代ディスプレイへの応用が期待されている液晶ブルー相の発現温度幅の拡大に成功し、薬理活性を発現する液晶分子も見いだすなど、液晶性材料の応用研究も推進した。同氏の研究成果は国内外において高く評価されており、日本液晶学会業績賞、弘前大学学術特別賞(遠藤賞)、2007年 The 14th International Display WorkshopsのBest Paper Awardをはじめ、多くの賞を受賞するに至っている。一方、日本液晶学会の運営面でも、理事、討論会実行委員長などを歴任し、日本液晶学会を活性化し牽引し続けた。同氏のこれら数々の業績は液晶科学および日本液晶学会の発展に著しく貢献するものであり、吉澤 篤 氏の功績は日本液晶学会功績賞に値する。

吉澤 名誉教授からは「受賞理由にある研究のすべては、私が2000年4月に本学に着任以降、研究室の学生の皆さんが主となって実施されたものであり、共著論文は100編以上に及びます。また、卒業生の中から国際液晶学会Glenn Brown Prize(2008年)、日本液晶学会奨励賞(2008年、2015年、2018年)などの受賞者を輩出しました」とのコメントがありました。

以下に吉澤 名誉教授の定年退職(2022年3月31日付け)に際し、卒業生から寄せられた研究室の思い出を掲載いたします。
※弘化会メールマガジン24号より転載

山口 章久さん(2007年博士後期課程修了)

吉澤先生、この度はご退官、おめでとうございます。また、大変おつかれさまでした。
先生との出会いは、私が学部3年生のときの講義でした。当時はまだOHPでしたね。先生がご自身の液晶の研究について、とても楽しそうに話されていたことが印象的で、そういった先生の姿に惹かれ、吉澤研究室への配属を希望しました。研究室では、学部4年生から博士後期課程修了までの6年間大変お世話になり、たくさんの経験をさせて頂きました。

先生の元には、日本の、世界の著名な液晶研究の先生方が訪れ、弘前にいても“できるんだ”と感じたのを覚えています。修士論文を書き始めるころ先生から、「山口君、修論、英語で書いてみるかー?」と言われ、冗談なのか、本気なのかわからないまま、真に受けてしまった私は修士論文を英語で書きました。真意はどうだったのかわかりませんが、とても良い経験で、自信を持つことができました。博士後期課程では、悩み続けた3年間でした。その中でも親身にご指導くださり、0から1を生み出す研究の厳しさと楽しさを教えて頂きました。Chem. Mater. に論文投稿できたこと、やっと自分で書いた論文という思いでした。

私も先生が弘前に来られたときと同年代になりました。先生は、よく“基礎が大事”とおっしゃっていました。当たり前のことのようですが、企業にいるとその言葉の意味をより重く感じています。部下をもつ立場になって、先生から受けたご指導の一部分でも伝えていければと思っています。

最後に、なんとなく大学生活を過ごしていた私に、変わるチャンスをくださったのが先生です。今があるのは、先生との出会いがあったからです。本当にありがとうございました。またカラオケをご一緒できる日を楽しみにしています。

岩持 広賢さん(2009年博士前期課程修了)

吉澤先生、この度はご定年おめでとうございます。吉澤先生には学部4年生、博士前期課程と3年間お世話になりました。

吉澤研では高度な秩序を持つ液晶相を作り出すというのを研究テーマとして頂き、自分が作った液晶材料が複雑な秩序を作り出すことを知るにつれて、徐々に研究にのめり込んでいきました。それは私以外の方も同様で、理工学部の校舎で吉澤研の部屋だけが夜中でも電気がついているほど、研究室の皆が実験をし、共に議論し、最適解を見つけるという生活を送っていた記憶が昨日のことのように思い出されます。

吉澤先生に強制されていたわけではなく、自主的に皆がハードな実験を行う文化が吉澤研にはありました。それほどまでに皆が研究にのめり込んだ理由は何かを思い返してみると、研究をする前のビジョン、そして研究を行う際のアイディアの豊富さと考察力が吉澤先生にはあり、そして実験は学生に自由に任せていたというのが一番大きかったのではないかと思います。思うような結果が長期間出ない時でさえ、吉澤先生は根気強く、学生の力を信じておられました。そのお人柄と頭脳があったからこそ多くの学生が慕って集まり、研究室内で切磋琢磨したのではないかと思います。先生が作った研究テーマの進め方に沿って、自分のアイディアを付け足し、それが大学院卒業間近の頃に大きな発見に繋がった経験は今でも忘れられません。

現在、私は企業の研究職として業務を行っていますが、研究の進め方、考え方といった「研究の基本」ともいえる思想は吉澤先生から教わったものが今でも大きく活きています。そして、その「研究の基本」に従って研究を進める程、当時の吉澤先生がいかに凄かったのかを痛感しています。最近では管理職として若手研究員を指導する立場になり、人を育てることの大変さを身に染みて感じているところです。吉澤先生から教わった研究の進め方、面白さを次代の若手研究者にも伝えていければと考えております。

吉澤先生、これからはご健康にご留意され、第二の人生を存分に楽しんでいただければと思います。今までお疲れ様でした。

【関連リンク】
researchmap:吉澤 篤 (Atsushi Yoshizawa)
弘前大学理工学部物質創成化学科 研究室HP