弘前大学

天候を感知し養殖用機械を遠隔操作できる自然エネルギー利用システムを開発 ―青森県鯵ヶ沢町のアユ養殖場で実証実験に成功―

2023.02.21

プレスリリース内容

本学研究者

理工学研究科 丹波 澄雄准教授
※丹波准教授の研究者情報はこちら(本学研究者総覧へ)

本件のポイント

  • 自然エネルギーを活用して遠隔地から養殖場の気象状況や装置の異常を常時監視し、養殖用装置を作動させるグリーンテック型養殖場管理システム「「GEMCOS-IoT システム」」を開発
  • 長距離通信用の LoRa WAN を使うシステムを Wi-Fi が利用困難な青森県鯵ヶ沢町の白神山麓にあるアユ養殖場に導入し、国内で初めて屋外フィールドテストに成功
  • 計測したデータはクラウド上で管理でき、停電や自然災害が起きても IoT デバイスやネットワークの電源を維持し、遠隔地から適切な対応が可能
  • 安全で省エネ・省力な養殖業の実現に貢献すると期待

本件の概要

ここ数年にわたる新型コロナウイルス禍や国際情勢悪化によりエネルギーや食料の安全保障(注1)が求められ、グリーンテック産業(注2)の拡大が必要とされています。特に北日本地域では海水温上昇や異常気象などの環境変化により魚介類の収穫量確保に苦戦しています。
弘前大学理工学研究科の丹波澄雄准教、東北大学マイクロシステム融合研究開発センターの古屋泰文学術研究員(前特任教授)らは、アジア太平洋地域最大級の独立系再生可能エネルギー発電事業者(IPP)であるヴィーナ・エナジーのグループ会社である日本風力エネルギー株式会社(東京・港、ニティン・アプテ代表取締役)、株式会社多摩川ホールディングス、アウラグリーンエナジー株式会社(青森県青森市、川越幸夫代表取締役)と共同で自然エネルギーを活用しWi-Fiにつながらない山間地でも遠隔操作可能な養殖システム「グリーンテック自立型IoTスマート養殖システム」(以下GEMCOS-IoTシステム)を開発し、青森県鯵ヶ沢町にあるアユ養殖場で実証試験に成功しました。
研究グループは3台の小型風車と2個のソーラーパネルから得られる電力により、養殖場に設置したセンサーを作動させ、その周囲の気象状況や装置の異常など環境パラメーター10種類の変化を常時クラウド上で監視することに成功しました。さらに、養殖場に置かれた給餌装置と大型LED照明を、約30km離れた弘前市内のスマホ画面から操作できることを確認しました。
本システムは農水産業における生産性向上、地方経済や住民生活の質の向上に寄与することが期待されます。
本研究の成果は、2月21日(火) 情報処理学会東北支部研究会(於弘前大学)で「白神非Wi‐Fi地域でのLoRa通信を用いた自立型グリーンIoT養殖システム」と題して発表されます。

詳細な説明

詳細につきましては プレスリリースをご覧ください。

用語解説

(注1)エネルギー・食料安全保障
国民の生活や社会経済の運用に不可欠なエネルギーと食料の入手可能性とその方法に関する国家レベルの施策である。持続的な成長を可能とするために、危機に強いエネルギー供給体制を構築して、「食料安全保障」を政策に取り入れること。以下の政府報告書(閣議決定:2022/10/28)に、「エネルギー・食料等への危機に強い経済構造への転換」との記述がある。
〔参考URL〕
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai8/siryou5.pdf
(注2)グリーンテック
環境保護の観点から持続可能な社会を実現するために、再生可能な資源やサービスを活用する技術・事業を指します。これは、化学やテクノロジーを活用して再生可能なサービスや事業を創出することを目的としている。工業製品生産プロセスにとどまらずに、農業食料生産、それらの省力化・自動配送や安全な管理システムまでも含む、脱炭素化イノベ―ションが期待できる。グリーンテック市場は、世界的なSDGs社会への流れに乗り、地球の生産限界を超える方策として発展が予測されており、IT(ICT)の次の投資分野としても高い期待が寄せられている。
〔参考URL〕
1) https://ideasforgood.jp/glossary/green-tech/
2) https://jp.weforum.org/agenda/2022/05/jp-green-tech-sustainable-growth/

プレスリリース

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本学お問合せ先

弘前大学大学院理工学研究科 丹波 澄雄准教授
TEL:0172-39-3725
Email:tanba(at)hirosaki-u.ac.jp ※ (at) は @ に置き換えてください