全国8地域の⼤規模認知症コホート研究により、APOEε4 遺伝⼦型と修正可能な危険因⼦が認知症リスクに及ぼす相互的な関連を報告
2026.06.05
研究
プレスリリース内容
本件のポイント
- 本研究では、⼤規模認知症コホート研究であるJPSC-AD研究に参加した65歳以上の地域住⺠9,605名を対象に、APOEε4遺伝⼦型※1別に修正可能な危険因⼦と認知症、脳画像所⾒との関連を解析した。
- その結果、APOE ε4遺伝⼦型⾮保因者およびヘテロ接合性保因者では、修正可能な危険因⼦の集積が少ないほど認知症の有病率が低かった。⼀⽅、APOE ε4ホモ接合性保因者では、修正可能な危険因⼦の集積の程度による認知症リスクの明らかな差は認められなかった。
研究の概要
近年、認知症予防を進めるうえで、⽣活習慣病などの修正可能な危険因⼦の管理が重要視されています。しかし、認知症に強く関連するAPOE ε4遺伝⼦型と修正可能な危険因⼦が認知症リスクに及ぼす相互的な関係については、⼗分に明らかにされていませんでした。
九州⼤学⼤学院医学研究院衛⽣・公衆衛⽣学分野の⼆宮利治教授、熊本将也学術研究員(理化学研究所・客員研究員兼務)ら、理化学研究所⽣命医科学研究センターの桃沢幸秀副センター⻑、および弘前⼤学、岩⼿医科⼤学、⾦沢⼤学、慶應義塾⼤学、松江医療センター、愛媛⼤学、熊本⼤学、東北⼤学加齢医学研究所の研究者からなる共同研究グループは、健康⻑寿社会の実現を⽬指した⼤規模認知症コホート研究であるJPSC-AD研究※2に参加した65歳以上の地域⾼齢住⺠9,605名を対象に、APOEε4遺伝⼦型と修正可能な危険因⼦スコアの組み合わせと認知症との関連を検討しました。修正可能な危険因⼦スコアは、教育歴、⾼⾎圧、糖尿病、低体重、脳卒中既往、喫煙、⾝体活動を点数化したもので、0から2点を低スコア群、3点以上を⾼スコア群としました。
その結果、APOE ε4遺伝⼦型⾮保因者とヘテロ接合性保因者※3において、修正可能な危険因⼦スコアが低い群では、⾼い群に⽐べ、認知症を有するリスクが有意に低く、脳MRI解析において海⾺・灰⽩質容積が⼤きく、⽩質病変容積が⼩さい傾向が認められました。⼀⽅、ホモ接合性保因者では、低スコア群と⾼スコア群の間で認知症リスクや、各脳部位容積に明らかな差を認めませんでした(図1,2,3)。
なお、本研究は横断研究であるため、因果関係を論じるには限界があります。本研究の成果は、APOE ε4ヘテロ接合性保因者など⼀定の遺伝的リスクを有する⼈においても、⽣活習慣病などの修正可能な危険因⼦の管理が、認知症のリスク低減に寄与する可能性を⽰すものです。
本研究成果は、国際学術誌Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoringに2026年5⽉22⽇(⾦)に掲載されました。
用語解説
- ※1:APOE ε4遺伝⼦型…APOE遺伝⼦は脂質代謝などに関わる遺伝⼦で、ε2、ε3、ε4などの型があります。このうちAPOE ε4は、アルツハイマー型認知症の代表的な遺伝的リスク因⼦として知られています。
- ※2:健康⻑寿社会の実現を⽬指した⼤規模認知症コホート研究:Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia(JPSC-AD)…我が国の8地域(⻘森県弘前市、岩⼿県⽮⼱町、⽯川県七尾市中島町、東京都荒川区、島根県海⼠町、愛媛県伊予市中⼭町、福岡県久⼭町、熊本県荒尾市)における地域⾼齢住⺠約1万⼈を対象とした⼤規模認知症コホート研究である(https://www.eph.med.kyushu-u.ac.jp/jpsc/)。ベースライン調査は2016年−2018年に実施され、予め8地域で標準化された研究計画に基づいて、詳細な臨床情報(認知機能を含む)、頭部MRI画像データ、遺伝⼦情報を収集している。さらに、認知症や⼼⾎管病の発症や死亡に関する追跡調査を継続している。なお、本研究は、国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の研究助 成⾦を受けている。また、サントリーホールディングス株式会社との共同研究も実施している。
- ※3:ヘテロ接合性保因者/ホモ接合性保因者…ヒトは通常、遺伝⼦を⽗⺟から1コピーずつ、計2コピー持っている。ある遺伝⼦型を1コピー(⽚⽅)持つ⼈をヘテロ接合性保因者、2コピー(両⽅)持つ⼈をホモ接合性保因者と呼ぶ。
論文情報
■ タイトル:APOEε4, modifiable risk factors, and dementia in community-based older Japanese adults
■ 著者名:Masaya Kumamoto, Toshiharu Ninomiya, Yoshihiko Furuta, Mao Shibata, Tomoyuki Ohara, Jun Hata, Tetsuro Ago, Yasuyuki Taki, Tatsuya Mikami, Tetsuya Maeda, Kenjiro Ono, Masaru Mimura, Ritsuko Hanajima, Jun-ichi Iga, Minoru Takebayashi, Yukihide Momozawa, on behalf of the Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia (JPSC-AD) Study Group
■ DOI:10.1002/dad2.70371
詳細
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お問合せ先
弘前⼤学 健康未来イノベーション研究機構
TEL:0172-39-5538
Mail:coihirosaki-u.ac.jp





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